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不妊に強い頼れる病院特集

いしかわクリニック
院長 石川 元春 先生

いしかわクリニック院長 石川 元春 先生

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インタビュー

いしかわクリニック インタビューTOP写真

「時間は無駄にさせません。でも無理もさせません。
少しでも小さな負担で妊娠を目指しましょう」

2020年で開院25周年を迎えた『いしかわクリニック』(大阪・堺東)は、南海高野線『堺東』駅西口から徒歩5分、堺市役所の南向かいという、とても通いやすい場所にあります。「当院の医師は、私一人。一貫した治療方針で、私が患者さま全員を把握しているという点が最大の特長でしょうか」と話す、穏やかな笑顔の石川元春院長。病院の規模を拡張し、医師団としてより多くの患者さまを診ていくことよりも、限られた人数ではあっても、自分に未来を託してくれた患者さまご夫婦の夢を着実に叶えることを目指してこられたドクターです。

“できるだけ自然に”を実践している証拠に、妊娠例の4人に3人は一般不妊治療で成功

いしかわクリニック インタビュー写真1

石川先生が、この25年、ぶれることなく貫かれてきたのは「できるだけ自然に近い妊娠を目指すことで、患者さまの身体的、経済的、時間的な負担を少しでも小さくする」というポリシー。決して、オーバートリートメント(不必要な、行き過ぎた治療)はしないという点でしょう。このようなステップアップ治療を方針として掲げる不妊治療専門施設は多いのですが、『いしかわクリニック』の場合は、治療のどの局面においても、“不必要な治療はしない”“無理に急がせない”という姿勢が徹底されています。
 しかも、石川先生は、日本の生殖医療の質を向上させ、安心して受けることのできるARTを提供することを目的に設立された『JISART(ジスアート/日本生殖補助医療標準化機関)』のメンバーでもあります。高度なART技術を持ちながら、“ご夫婦のご希望がない限り、必要のない方には用いない”のです。

「通常は、不妊検査を行って、ご夫婦に決定的な不妊原因がなければ、タイミング療法からスタート。6周期結果が出なければ人工授精(AIH)を検討します。当クリニックのAIHの妊娠率は、38歳以下に限ってみれば約15%。人工授精としては高水準と考えています。AIHの有効回数といわれる6周期試しても妊娠しなければ、体外受精へのステップアップを選択肢に加えます。無理に急がせることはいたしません。ただ、経済的な負担、身体的な負担に並んで、時間的な負担も非常に重要ですね。ですから、お二人にとって可能性の低い治療法を漫然と続け、時間を浪費させることはあってはならないと思うのです。
 このような方針で治療にあたった結果、赤ちゃんを授かった方の約50%がタイミング療法で、さらに約25%が人工授精(AIH)で、と約75%の方が一般不妊治療で妊娠されています。
 もちろん、治療の主役はご夫婦。生殖医療のプロとして、私が最善と考える治療法をお話させていただきますが、実際にその方法を選択されるかどうか決めるのはお二人です」

いしかわクリニックの妊娠例の内訳をうかがい、一般不妊治療を丁寧に施せば、本当に体外受精や顕微授精といった生殖補助医療(ART)が必要になる方は限られてくるということを再認識しました。


その体外受精は本当に必要ですか!?
顕微授精でなければ受精しませんか!?

いしかわクリニック インタビュー写真2

「必要なタイミングで、本当に必要な方々のために」という姿勢は、精密検査や、体外受精か顕微授精かの選択時にも変わることはありません。

「最近、不妊治療の現場では、卵巣年齢を調べるという名目でAMH(抗ミューラリアンホルモン)を測り、これが低値だというだけで体外受精を急がせる傾向にあります。でも、妊娠できるかどうかの運命を、最終的に握っているのは卵子の質なのです。ところが、その質を直接測る検査はありません。類推するのであれば、むしろAMHの値よりも、実年齢との関係性のほうが深いとされています。ですから、私はAMHの検査をすべての患者さまに対して行う必要はないと考えています。当院でAMHを測定するのは、体外受精にステップアップすることが決まってから。採卵できる卵子の数をAMHから推定し、最終的に卵巣刺激法を決定する参考資料にすることを目的に行います。ショート法、ロング法、アンタゴニスト法、準自然周期の中から、その方の状態に適した方法を選択しているのです。
 また、近年の日本のARTは、体外受精よりも顕微授精を選択される方が多くなっていて、これは世界的にも珍しい状態となっています。もともと顕微授精は、体外受精では妊娠が難しい、重度の男性不妊の方のために考案された治療です。顕微授精による初めての赤ちゃんが1992年に誕生して30年が経ち、ほぼ安全性は確立されました。それでも、胎児への影響、さらに次の世代への影響など、まだまだ検証は続けられるべきです。より確実な受精を望まれて、採れた卵子の数が少ない場合などには顕微授精をすすめるケースもあるようですが、私は精子の濃度や運動率に問題がなければ、基本的には医療の介入度が低く、より自然に近い体外受精からスタートすべきだと考えています。顕微授精は、受精障害が判明した場合に行うべきでしょう。どうしても、顕微授精を試してみたいとおっしゃるご夫婦には、採れた卵子を二分して、体外受精と顕微授精を行うスプリットという方法をおすすめしています。顕微授精は、受精率は上がるかも知れませんが、妊娠率を引き上げるわけではありません。この方法でしか、受精卵が得られない方のための治療なのです」

さらに、「日本の顕微授精の権威・柳田薫医師も、日本卵子学会で受精障害が3割くらいまでならば、次回のチャレンジも体外受精が望ましいと報告されているんですよ」と石川先生。安易に顕微授精を選択する日本の現状を危惧されていました。いしかわクリニックの場合は、顕微授精が多い年でも5割弱、通常は3割から4割と全国的にみると抑えめ。ちなみに、2019年には体外受精が約8.3万周期、顕微授精が約12.6万周期行われています。


国は、子どもがいる家庭の子どもの人数を増やすことに投資していますが、2人→3人の前に0人→1人への助成を手厚く

いしかわクリニック インタビュー写真3

現在、日本の生殖補助医療は、凍結胚移植が主流。できるだけ胚を凍結することを目標とする施設もある中、いしかわクリニックでは、患者さまの状況に合わせて新鮮胚移植も積極的に行われています。その理由の一つとして、石川先生があげられたのが助成金※の問題でした。
※2022年4月以降、ART治療にも健康保険が適用されることが決定している。

「所得や年齢など条件を満たす方には『不妊に悩む方への特別治療支援事業』として、国と自治体が共同でART治療への助成金を出していますが、これは胚移植後の妊娠判定が終わって、はじめて申請できるというもの。高額の医療費を負担しなければならない患者さまの立ち場を思えば、採卵した周期に新鮮胚を移植して、すぐに助成金の申請できるというのは馬鹿にできないメリットだと思いますよ。あの支援事業は、患者さまのためにまだまだ改正すべき部分がたくさんあります。短期決戦でがんばろうという方にはいいのでしょうが、治療のペースという意味で、患者さまに無理を強いる部分があると思います。子どもが欲しくて仕方がない人たちへの支援をもっと手厚くしてもらいたいですよね。
 保育園の待機児童を減らして職場復帰を支援し、子どもを育てやすい環境を整えることは、非常に重要なことです。もちろん、そのような努力は社会として必要なのですが、果たしてすでにお子さんが二人おられるご夫婦が、環境が整ってきたからと三人目をお考えになるでしょうか? 国としては、望めば比較的容易に妊娠できる方々にその気になってもらうほうが、税金の投資先としては効率がよいという発想なのかもしれませんが、人の心を外からの働きかけで動かすのは難しいことです。今、お子さんが欲しいと心底望みながらも、それでも経済的な理由だけで諦めざるをえない方たちがいるのであれば、そこから着手すべきではないでしょうか? 国には、2人を3人にする努力以上に、0人を1人にすることに投資していただきたい。私は、そう考えています」

石川先生という医師は、つくづく患者さまの立ち場で物事を見ておられる方なのだと思わされるお話でした。


“質問・要望書き込みシート”をご利用ください。
診察時にきちんと回答しています

いしかわクリニック インタビュー写真4

「僕は、患者さまにもスタッフにも無理を強いないように気をつけています。僕自身、“無理はしない”というのがモットーですから(笑)。病院も自分の目が行き届く規模で、しっかり丁寧に診させていただくのが性分にあっていると考えて、ここまでやって参りました。もちろん、ときにはセカンドオピ二オンが必要なこともあるでしょうが、通院の度にドクターが変わるというのは患者さまにとって有益なことよりも不利なことのほうが多いのではないでしょうか。
 きちんと納得して不妊治療を受けていただくためには、こちらも、その患者さまの不妊原因はもちろん、ご夫婦のライフスタイルなども把握したうえで、それぞれのケースに合わせて、きめ細やかな対応をしていくべきです。ですから、体外受精へステップアップされるご夫婦への説明なども、患者さまを集めて病院側の治療スタイルを説明する不妊教室のかたちを取らずに、すべて個別対応にしています。
 疑問を抱えたまま、不安な状態で治療を受けることがないよう、『質問・要望書き込みシート』というものを受付に用意しています。これを診察前に受付に出していただけば、診察時にはご回答させていただきます。“つい、忙しそうな様子に遠慮して聞きそびれた”などということもなくなりますし、文字にしてまとめることでお考えを整理してもらうこともできます。カウンセリングともども、遠慮なくご利用いただきたいと思います」

ふんわりと優しい笑顔が印象的な石川先生ですが、取材を終えようとすると、ふと凛とした瞳をされ、こうおっしゃいました。「僕たち不妊治療医は目の前のご夫婦の夢を一つひとつ叶えながら、実は次世代を生み出す仕事をしているんです。小さなクリニックで奮闘する日々が、この国の未来を支えている、そう思うと力が湧いてきます。僕は、この仕事に誇りを持っています」と。


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