へぇ～そうなんだ。遠回しに責められてることは、分かるんだ。

この時、妙に感心したのを覚えてる。


直接訴えたらますます縁遠くなりそうで……明るく話せる自信はもうない。思い詰めて夫を引かせるのが関の山。
それこそ嫌われて女として再起不能になってしまったら…そう考えて、身動き取れずにいた。



私たちは声を荒らげて言い争うタイプではない。夫が静かに全身で怒ったまま店を出た。車に乗り込み、まずは夫婦で過ごせる貴重なランチタイムを台無しにしてしまったことをお詫びした。その理由を話したい、そうすべきのに。何度も何度も自問自答しては消し去ってきたから、言葉が出て来ない。

結局何も言えずに帰宅した。



電気も点けず、アウターも脱がず、向かい合った。
もう逃げ場はない。


子供を真剣に考えたくて持ちかけた話を拒否されたこと、セックスレスで辛かったこと、女性としてこのまま終わってしまうのではないかという怖さーー

これまで味わった思いの丈を全て吐き切れはしないけど、ポツリポツリと泣きながら懸命に伝えた。


ついに言ってしまった。
夫は最後まで黙って耳を傾けていたがセックスレスが原因だとは思ってもいなかったようだ。表情から怒りが消えていつもの夫に戻っていた。


「ぢだるまちゃんのこと好きだよ」夫は言った。
不器用に言葉をつむごうとしている夫も、どうすればいいのか分からないようだった。