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不妊に強い頼れる病院特集

TFC台北生殖センター
CEO 曾 啓瑞 教授

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台湾の卵子提供(国営)で母になる道。
コロナ禍の間、閉ざされていた門が開きます

台湾・台北市に2019年に誕生した『TFC台北生殖センター』のCEO 曾啓瑞(そう けいずい)教授に、オンラインでお話をうかがうことができました。生殖補助医療の法整備が進んでいない日本国内では、以前から、難治症例のご夫婦の間で海外での卵子提供(ドナー治療)を選択するケースが増える傾向にありました。新型コロナウイルス感染症の蔓延による渡航制限で唯一の道さえも断たれてきたご夫婦にとって、制限緩和の動きは「夢」への扉が再び開かれた思いではないでしょうか?

台湾初の体外受精Babyの父が創設した、
アジアのフラッグシップとなる生殖医療センター

TFC台北生殖センター インタビュー写真1

『TFC台北生殖センター(正式名称:台北産婦人科クリニック生殖医学センター)』のCEO・曾啓瑞教授は、1985年に台湾初の体外受精(IVF)での赤ちゃん誕生に成功した医師、子宮内膜症研究の大家として、日本の生殖医療の世界でも大変高名な方です。台北医科大学をご卒業後、渡米し、ハーバード大学の大学院修士課程に進み、研究員として1983年までハーバード大学に在籍されています。これまでに国際学会への参加は321回を超え、執筆された生殖医療の学術論文は255本にもなるというのですから、その活躍ぶりはまさにワールドワイドです。

「とくに日本とはつながりが深く、これまでに生殖医療分野の学術学会(日本生殖医学会、日本受精着床学会、日本IVF学会など)や大学などで30回以上の講演経験があります。2013年までの9年間にわたり台北医学大学大学院の院長を務めていましたので、その間には多くのアジア各国の最高学府の大学と連携をとってきました。東京大学、京都大学、慶應義塾大学などの産婦人科領域の教授陣にはたくさんの友人がおりますので、つい先日もART Forum秘書長 末岡 浩(Dr Kou Sueoka)にお声をかけていただいて『第40回日本受精着床学会』で着床前診断(PGT-A)についてのトピックをお話させていただいたばかりです。

TFC台北生殖センター インタビュー写真2
※曾啓瑞教授ご夫妻と武谷雄二先生(日本産科婦人科学会初代理事長。東京大学医学部名誉教授)ご夫妻。2012年4月21日東京・六本木『ホテルオークラ』での武谷先生の退官記念パーティーにて。

そのようなご縁もあり、日本の生殖医療の現状はよく理解しているつもりですが、日本で体外受精などの生殖補助医療(ART)を受けておられる患者様のご年齢はだいぶ高めだと感じております。例えば、45歳以上の患者様のように卵子のエイジングが進んでしまった状態では、ご自身の卵子で何度ARTを繰り返しても、なかなか望んだ結果は得られません。現在の日本で卵子提供によるドナー治療を受けるのはたいへん困難な状況ですが、台湾であれば国の管理のもと合法的に卵子提供が行われています。お子さんを得たいという夢を抱えた、年齢の高い日本の患者様にとっては、台湾での卵子提供は人生を変える、一つの選択肢になるのではないでしょうか」

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐべく水際対策を行ってきた台湾でも、いよいよ渡航制限の緩和がはじまり、2022年9月12日からは欧米などの54ヵ国に対して査証免除措置が再開されることになったのですが、9月5日の発表時点では、残念ながら日本はまだ除外国になっています。つまり、査証がないと入境できないということのようですね。
※台湾当局は9月29日0時(台湾到着時刻)より日本を含む査証免除措置国からの査証免除渡航を再開しました。

TFC台北生殖センター インタビュー写真3

「はい、ただ日本の感染状況も落ち着いてきておられるようですので、遠くない時期に日本に対しても査証免除措置が再開されるとは思いますが、もともと査証の件はご心配はいりません。実は、『TFC台北生殖センター(以下TFC)』は、台湾の衛生福利部(日本の厚生労働省にあたる国の機関)から、台湾北部の生殖医療を行う施設で唯一『医療サービス国際化推進計画会員機関』に指定されている施設なのです。つまり、TFCなら医療滞在査証(医療ビザ)の申請をしていただくことができますので、治療のための渡航準備をスタートしていただけます」

人を包み込む温かな医療で高い成功率を。
自分には満点を目指す厳しさを持ちたい

TFCは、CEOの曾教授を筆頭に大変優秀な8人の生殖医療の専門医が集っているそうですね。TFCの理念をうかがってもよろしいでしょうか?

TFC台北生殖センター インタビュー写真4

「私は、アジアの生殖医療センターのフラッグシップとなる施設として、海外に向けた【質の良い医療】を提供することを目指して、このTFCを設立しました。これからの医療には、グローバル化と慈善事業の視点が必要です。ビジネスではなく、人間性を大事にした温かな医療を提供する、血の通ったクリニックにしたいと思っています。

一方で、できる限り高い妊娠率を追求したいとも考えました。そのため、アメリカのハーバード大学やスタンフォード大学、コーネル大学、イギリスのケンブリッチ大学、モナシュ大学、オーストラリアなど海外での国際交流経験があり、台湾国内の医療センターで豊富な経験を積んでいた、有能な医師ばかりを集めたのです。

不妊治療の世界は、妊娠(出産)か、そうではないか、その結果は0点か100点かという極端な結末しかありません。60点というような、中途半端な着地点はないのです。だからこそ、TFCは自分たちに対しては、常に満点を求める厳しい目を向けて、成功率を上げていきたいと考えています」

『国際介助生殖医療モニタリング国際委員会(ICMART)』の統計によると、台湾における体外受精の着床率は高く、アメリカに次ぐ世界第2位だそうですね。TFCのIVFの実績を教えていただけますか?

「TFCは開院して2年半になりますが、すでに5000回の採卵を経験しています。患者様の平均年齢は約42歳ですが、38歳以下の患者様に限れば、胚移植あたりの妊娠率は68%を誇っています。難治症例に対しては、週に1回の院内ミーティングで治療法の検討会を行うことで、成功率を高めることができています。
また、40歳以上の年齢が高めの患者様に対しては、子宮内膜着床能(ERA)検査や着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)などを行うことで妊娠率を引き上げることができています」

世界第2位のARTの妊娠率を誇る台湾で、
SNQを取得しているTFCのクオリティは本物です

『台湾の体外受精の父』ともいわれ、長きにわたり、まさに台湾の生殖医療を牽引してきた曾先生が、満を持して創設されたTFC。どのような医療施設なのかを、もう少しくわしくお聞かせいただいても良いでしょうか?

「そうですね。TFCをよりご理解いただくために、特長を4つほどご紹介させてください。

1.『台湾国家品質標章SNQ』取得の医療機関

TFCの医療の質の高さは、『台湾国家品質標章(SNQ)』を取得しているということで証明できると思います。SNQとは、シンボル・オブ・ナショナル・クオリティの略で、台湾市場の健康関連サービスおよび製品の安全性と品質について、各領域トップの専門家が審査し認証の可否を行うものです。この認証を得ていたことで、先にお話した医療ビザも、個人経営の病院では唯一申請が許可されました。蔡英文(さい えいぶん)総統にお会いする機会も得て、直々に賞を戴いたこともございます。台湾北部で随一の生殖医療のクリニックとして、難しい症例で長く悩み苦しんできたであろう患者様を、温かな空間でお迎えし、結果を出し、笑顔で送り出すことが使命だと思っています。

2.立地が良く、セキュリティー管理の行き届いた南山広場内

TFCは、台北のランドマーク『台北101』の北東に隣接する南山広場(高層ビル)に入っています。南山ビルの造形は特別で、まるで掌を合わせたような、合掌(祈り)のかたちをしています。台北信義区にあるのですが、日本で言えば、ちょうど銀座のような雰囲気の街です。また、立地がたいへん良く、羽田のみならず、大阪、福岡など日本各地から多くの直行便が到着する桃園空港から、車で40分あればお越しいただけます。台北市内のもう一つの空港、松山空港からは車でわずか15分の距離にあり、こちらからは送迎サービスもご提供しています。
南山ビルは、2018年に開業したばかりの新しい高層ビルということもあり、最新の空調システムを完備しており、フロア内全体の空気が4〜6時間で入れ替わっていますので、感染症対策の面からも安心ですし、プライバシーを尊重するためのセキュリティー管理も万全で、ビルに入る際には予約制のICゲストカードが必要になっています。
さらに、安心という面では、台湾も日本と同様に地震の多い国ですが、南山ビルには2500トンの力に耐えられるハイレベルのショックアブソーバーが使われています。受精卵をお預かりする生殖医療において、胚培養室(ラボ)内への電気の供給を確保することは非常に重要なことですので、万が一の停電に備えて、南山ビルに2個、TFCとしても1個、24時間稼働の予備電力を持つことでリスクを回避しています。

3.生殖技術の柱。世界の先駆けとなる「IVFラボ」

アジア生殖医療のベンチマークを目指すTFCにとって、患者様の胚をお預かりする胚培養室(ラボ)は心臓部。現在の最高基準にのっとった、世界の先駆けとなるIVFラボを持っています。基準の一つ目は、全員が10年以上の経験を持つ胚培養士の胚生検の卓越した技術です。二つ目は、胚を培養器から取り出すことなく観察しながら育成できる、3台のタイムラプスインキュベーター。全症例に対応しています。15分ごとの連続的な胚の成長をAIデータに記録し分析することで、より着床率の高い胚を選別することができ、成功率を上げることに貢献しています。そして最後は、着床前遺伝診断の技術です。
また、ラボ内の温度や湿度は厳しくコントロールし、室内ダストや揮発性有機物の混入がないよう、半導体の工場と同等レベルの高い清浄度を保っています。ラボは細部に至るまで、生殖センターの国際的な最高基準である「カイロ・コンセンサス(Cairo consensus)」に従い、パラメータをすべてモニタリングし記録を残しています。

4.医師をはじめ、スタッフはみなスペシャリスト集団

そして、先ほどもお話しましたが、TFCの8名の医師は、台湾各地の大病院で平均20~30年の豊かな治療経験を積んできたスペシャリストぞろいで、たいへん信頼できる医師チームです。あらゆる難治症例を乗り越えるべく、不妊症はもちろん、男性不妊症、不育症を専門分野とする医師のほか、専属の麻酔医もいます。
医師チームは、患者様の声に耳を傾け、お一人お一人の考えに合わせて治療計画を立てています。どんな難治症例も、TFCの医師を困らせることはできません。心を込めて、最善を尽くします。
医師以外のスタッフも、超音波検査や血液検査の技師も専門スタッフがクリニック内におりますので、血液検査なども外注に出す必要がなく、90分で判明しますので、採血したその日のうちに、速やかに検査結果を治療に生かせる態勢を整えています。また、妊娠を目指される女性に、理想的な食生活をアドバイスする栄養カウンセリングも提供しています。
そして何より、ご不安なのが言葉の壁だと思いますが、心配はご無用です。
海外から来られる患者様のため、TFCには日本語や英語が話せるスタッフがおり、1対1で治療終了まで患者様の専属として対応窓口を務めます」

卵子提供を希望される患者様は、不妊治療そのもの以外に、渡航手続きのこと、お子様への告知のことなど、心配なこと、聞いておきたいことがたくさんあると思います。1対1でじっくり信頼を築きながら、気軽に質問しやすい態勢が整っているのは、とてもありがたいことですね。

日本で6年治療後、渡台したゆりさん(仮名)は、
PGT-Aを受け45歳で見事に妊娠されました

TFC台北生殖センター インタビュー写真5

「最近、TFCには台湾在住の6組の日本人のご夫婦が不妊治療を受けに来られ、すでにそのうち5組が妊娠されています。残る、もう一組の方は、奥様が43歳と年齢が高めの方で、今も治療継続中です。
今日は、TFCを開院する前に私が担当し、見事に出産された、ゆりさん(仮名)のお話をしましょう。ご主人が台湾の日系企業にお勤めの方で、台湾にお住まいの日本人のご夫妻です。ゆりさんは2017年に台湾に来られ、当時、私のいた台北医学大学医学院にいらっしゃったのですが、その時点で、45歳になっておられました。すでに日本で6年もの間、不妊治療を受けておられましたが、なかなか良い結果が得られなかったそうです。その後、一年間で5回の採卵を行い、20個の卵子を得ました。5回目の採卵では3個の胚盤胞ができましたので、PGT-Aを行ったところ、そのうちの1個が染色体異常のない胚でした。この胚を移植し、2019年にお子さんを出産されたのです。治療をはじめて19年もの月日が経っておられたそうで、お力になれて、本当に嬉しく思います」

海を越えた台湾で曾教授と出会われたことで、実を結ばれたのですね。コロナ禍以前から卵子提供のための渡航先として、多くの日本人に選ばれている国が台湾です。アメリカやタイなど、卵子提供が受けられる国はほかにもありますが、医療技術、治療費用、法制化されているか、子の出自を知る権利を保証するかなど、その中身は国によって大きな違いがあります。曾先生は、台湾が選ばれている理由は、どこにあるとお考えでしょうか?

TFC台北生殖センター インタビュー写真6

「台湾の卵子提供が、2007年に制定された法に基づいて国によって運営されている、そして医療施設と患者様の間にエイジェンシーが入ることなく、直接、クリニックに相談ができる、といった安心感が大きいのではないでしょうか。また“一人のドナーが提供した卵子から生まれる子どもは一人のみ”という取り決めがあるのも、台湾独自のルールです(※1)。
しかも、TFCは自ら台湾最大級の卵子・精子バンクを運営しています。卵子提供が決まってからドナーを募るわけではなく、すでに採卵済みの卵子がありますので、より素早くマッチングできます。一般的に、ドナーには梅毒、淋病などの性病やエイズ、肝炎などの感染症にかかっていないこと、糖尿病、サラセミア、貧血などの基礎疾患がないこと、心理状況に問題がないことの確認がとられますが、TFCでは、より質の高いドナー卵子をご提供するために独自にすべてのドナーに対して事前検査で排除できる遺伝子疾患(※2)の検査を実施するなど、より厳しい基準を設けています。

台湾ではクリニック側が患者様のご希望を聞いてマッチングを行うのですが、本来、リクエストできるのは肌の色、血液型、民族の三つです。それに加えて、ドナーの情報は匿名性が守られていますので、はっきりとは申し上げられません。 開院以来、TFCでは台湾人を中心に55人の方が卵子提供を受けており、そのうち48人が妊娠、出産されています。成功率は、87.3%に上ります。ここ数か月は、新型コロナ感染症の水際対策が緩められつつあることで、ドイツやアメリカなど海外からも続々と卵子提供希望の方が来院されています」

※1 これは、同じドナーからの卵子で生まれた子ども同士が、万が一にも、それと知らないままに婚姻してしまうような事態を避けるために設けられたルールです。
※2 1.遺伝子検査(Chromosome)、2.脆弱X染色体(Fragile X)検査、3.脊髄性筋萎縮症(SMA)分子遺傳檢驗報告、4.グルコース-6-リン酸脱水素酵素 (G6PD)

2022年9月16日現在、日本出発前のPCR検査などは不要ですが、まだ台湾入国後の隔離期間(3日間の隔離後、4日間の自主防疫)は必要な状況です。この隔離期間の設定が撤廃された暁には、より受診しやすくなりそうですね。
※台湾当局は9月29日、10月13日から海外からの渡航者に対する新型コロナウイルス関連の隔離義務を撤廃しました。

「取材の最後に、日本の皆様にお伝えしたいことがあります。新型コロナウイルス感染症の感染拡大時には、たくさんのワクチンを台湾に提供していただき、本当にありがとうございました。このご恩を忘れず、生殖医療の分野で日本の方々に恩返しができればと思っています」

曾教授と日本のご友人たちとのお写真

  1. 2010年日本で初めての体外受精児の誕生を成功させた東北大学名誉鈴木雅洲教授、徳島大学苛原 稔教授と。
  2. 2016年アジア子宮内膜症会議にて鳥取大學原田省教授と。
  3. 2016年台湾子宮内膜症会議にて長田尚夫院長と。
  4. 2017年San Antonio,USAにて世界初の体外受精児のルイーズ・ブラウンさん、田中 温院長と。
  5. 2017年環太平洋生殖医学会にて森本 義晴院長と。
  6. 2017年日本生殖医学会JSRM下関にて東京大學大須賀 穣教授、山口大学杉野 法広教授と。

オンラインの画面越しにも、ひしひしと伝わる威厳と慈愛を兼ね備えた曾先生でしたが、丁寧な謝辞をお伝えくださいました。台湾での卵子提供に人生をかける選択をされた日本のご夫婦が、曾先生のもとを訪ねられた折には、どうかよろしくお願いします。

注:現在、日本で卵子提供を行っているJISARTやOD-NET(現在、卵子提供を受けたい方の登録は中止中)などの支援団体のガイドラインでは、「子が出自を知る権利を認めること」などが条件になっています。台湾では「子が出自を知る権利を認めないこと」を条件にし、さらに法制化していますので、このあたりの考え方やドナーの選択方法(JISARTは自身で姉妹や友人などの協力者を捜索、OD−NETはマッチング委員会が選択、台湾は患者さんの希望に合うよう病院が選択)などは大きく異なります。その違いを熟知し、また熟慮することは重要ですが、そもそも国内での卵子提供のガイドラインでは適応にならない患者さんもおられます。

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